笹川寿之 金沢大学医学系研究科准教授
世界では、いまだに子宮頸がんは女性の中で2番目に多いがんです。日本でも20-30歳代のがんの中では最も多いがんとして知られています。このがんが他のがんと異なる点は、20歳代の女性に発生する可能性があること、定期的に検診を受けることによってがんになる前に発見が可能であり、確実に予防することができること、そして、原因がはっきりしているという点です。がんというと、中〜高年齢の病気のように考えられていますが、子宮頸がんは、最近、20〜30代の女性の発症が急増しています。
私は、大阪府の市中病院と金沢大学の医学部で長年に渡り子宮頸がんの臨床とヒトパピローマウイルス(HPV)の研究に携わってまいりました。この20年程でHPVと子宮頸がんについて色々な新しい発見がありましたが、若冠21歳で子宮頸がんで亡くなった患者さんのことは今でも忘れられません。その人の場合は、原因不明の発熱で内科に入院していました。内科の担当医がよく聞くと生理が不順であるという事で、入院後数ヶ月してから婦人科に回ってきました。この若い女性が子宮頸がんだは誰も思わなかったのです。すでに癌は、周囲の組織やリンパ節に転移し、手術してもとりきれる状態ではありませんでした。この人からHPV16型が発見されました。
このような悲劇を生まないために、私たちは子宮頸がん検診の重要性を皆さまにお伝えし、一人でも多くの女性に子宮頸がん検診を受けていただけるよう、昨年、本会「NPO法人子宮頸がんを考える市民の会」を設立いたしました。「検診を受けていなかったために、この“予防できるがん”にかかってしまう」ことのないように、子宮頸がんに関する正しい知識とがん検診の重要性をお伝えしています。でも、子宮頸がんの検診は恥ずかしい、めんどう、こわい、痛そうなどと感じている若い女性が多く、抵抗感が強いのも確かです。また、本当に検診を受けなければならない20歳代後半から40歳迄の女性は、仕事や育児に追われるため、市町村が主催する子宮がん検診を受けられないのが現状でしょう。
最近、子宮頸がん検診の補助として、信頼できるHPV感染を調べる検査(HPV検査)が出てきました。このHPV検査法は子宮頸がん検診の補助検査法としてWHOでもその有効性が認められています。しかし、日本では実際の検診にはほとんど使われていません。我々は、まず通常の子宮頸がん検診(細胞診)を受ける事をお勧めし、それがどうしても受けられない人や受けたくない人には、インターネットを通じてこのHPVの自己検査(自分で採取した検体を検査する方法)を受けられるようなシステムを作り始めています。また、子宮頸がん検診の補助として、市町村の子宮頸がん検診にこのHPV検査を導入する推進運動も行っています。
何度も申し上げますが、子宮頸がんの原因はHPV感染です。このように原因がはっきりしたがんは他にありません。もはや、子宮頸がんは「早期発見」する病気ではなく、「がんになる前に」予防する病気であることを皆様に知っていただき、なるべくたくさんの方に本会の活動に参加していただきたいと考えております。是非、一人でも多くの女性や女性の健康に関わる多くの企業などの支援を御願いしております。また、子宮頸がん撲滅のための啓発活動に実際に協力していただける人も募集しております。 |